痙縮に対しては非常に効果的
過去のブログで痙縮について書きましたが、痙縮は筋肉が伸長によって過剰に反応し、収縮し、硬くなる現象です。
内反尖足はまさにその現象の結果起こっていると言えます。
足が麻痺すると
足首がぶらぶらと下を向きます。
その状態で接地すると
足先から接地→急激に足裏全体が着く。
この時、ふくらはぎの筋肉が強く・早く伸長されます。
こうすることで硬い内反尖足ができあがります。
なので、足首のコントロールが難しい麻痺のレベルの場合は
装具などで固定をして、足は伸び縮みしないように硬めてしまった方が歩きやすいです。
もちろん、足首が動かせるようにリハビリを続けることは絶対に必要です。
もし、装具なしで歩き続け、足首が硬くなりすぎた場合
この場合は、安全に足裏の接地ができないので、歩くことに非常に恐怖心があります。過去にそのような患者様もいましたので、病院と連携し、ボツリヌス注射で痙縮を弱め、装具の見直しをすると屋外歩行がかなりスムーズになった方もおられます。
(注:足部を固定するので、足部以外に可動性が必要です。特に股関節の内旋といった内に捻る可動域が必要です。股関節が硬い方は股関節も柔らかくした方が歩きやすいです)
ボツリヌスの痙縮への効果
1. ボツリヌス療法の基本
ボツリヌス療法は、脳卒中、脳性麻痺、脊髄損傷、多発性硬化症などの痙縮治療に用いられる。
作用機序は、神経筋接合部でアセチルコリンの放出を抑制し、筋の弛緩を促す。
効果は2~3日で発現し、3~4ヶ月持続。その後、神経が再生し効果は消失する。治療ガイドラインでは、脳卒中後の上下肢痙縮に対して推奨度A(強く推奨)とされる。
2. 適応
• 上肢では近位筋(肩周り)への施注が機能向上に寄与すると考えられ、下肢では内反尖足の治療に強いエビデンスがある。
3. ボツリヌス療法とリハビリテーションの併用
単独のボツリヌス療法だけでは、歩行や上肢機能の改善効果は限定的であり、リハビリテーションとの併用が重要。
4. 上肢と下肢の痙縮に対する治療戦略
(1) 上肢
• 施注筋として、大胸筋、上腕二頭筋、橈側手根屈筋、浅指屈筋、母指屈筋などが対象。
• ボツリヌス療法の有効性はRCT(ランダム化比較試験)で証明されており、手関節・手指のMAS(修正アシュワーススケール)の低下、ADL改善に有効。
• しかし、機能的な改善にはリハビリテーションが必要。
(2) 下肢
• 主な施注筋は、腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋。
• 内反尖足に対するボツリヌス療法のエビデンスは確立されている。
• しかし、歩行機能改善にはリハビリテーションとの併用が必要(例:トレッドミル歩行訓練、装具療法)。
5. 繰り返しの施注とその影響
• 頻回投与(平均2.8回)でも効果は持続し、安全性も確保されている(抗体形成の報告なし)。
5 痙縮に伴う線維化とその評価
• 痙縮が長期間続くと、筋の線維化が進行し、ボツリヌス療法の効果が減弱する可能性がある。
• エラストグラフィー(超音波評価)を用いることで、筋の硬さ(strain ratio)や線維化の程度を評価可能。
• 線維化が高度な場合は、体外衝撃波療法や物理療法を併用することで改善の可能性がある。
7. 今後の展望と治療戦略
• 痙縮の軽減だけでなく、「隠れた随意運動」を引き出す治療戦略が重要。
• 客観的評価(動作解析、表面筋電図)を用いた施注戦略が必要。
• ボツリヌス療法の効果を最大化するために、適切な評価・目標設定・治療プログラムが求められる。
まとめ
• ボツリヌス療法は痙縮治療の有効な手段であり、適切な筋選択と投与量の調整が重要。
• 単独では効果が限定的であり、リハビリテーションと併用することで機能改善が期待できる。
• 繰り返し施注は安全であり、長期的な効果が確認されている。
• 線維化が進行すると治療効果が低下するため、評価と適切な併用療法が求められる。
このように、ボツリヌス療法は痙縮管理の中心的治療であり、適切な戦略とリハビリの組み合わせが鍵となります。
参考にした文献はこちらです