リハビリテーションにおける「低周波刺激」の基礎

1. 低周波刺激とは?

低周波刺激(Low Frequency Current Stimulation:LFCS)とは、**一般的に300Hz以下(場合によっては1000Hz以下)**の周波数で電流を流す物理療法です。

主に神経や筋へ作用し、以下のような治療目的で用いられます:

  • 筋収縮の誘発(筋力強化・廃用予防)
  • 痙縮の抑制
  • 鎮痛(TENS的応用)
  • 末梢循環の改善

2. 電気刺激療法との違いは?

「低周波刺激」は電気刺激療法の一分類であり、他にもTES(治療的電気刺激)やFES(機能的電気刺激)などがあります。

種類特徴主な目的
LFCS300Hz以下の刺激筋収縮・痙縮抑制・鎮痛
TES随意運動の再学習支援筋再教育・廃用対策
FES動作に同期した刺激歩行補助・ADL支援
TENS感覚線維を刺激鎮痛・疼痛コントロール


3. 刺激条件の基本

条件目安・特徴
周波数10〜100Hz:目的により調整(低ければ遅筋・高ければ速筋)
パルス幅0.2〜0.5ms程度:長いほど深部刺激しやすい
強度感覚閾値〜筋収縮が得られる程度まで段階的に
波形単相性 or 二相性(皮膚刺激を減らすためには対称二相性が望ましい)
電流タイプパルス電流・干渉波・断続正弦波など目的に応じて選択

4. 筋収縮を得るメカニズム

  • 筋は直接刺激よりも**運動神経終末(運動点)**を介して反応する。
  • 表面電極では、運動点を正確に捉えることで効率的な収縮が可能。

5. 注意点(臨床での落とし穴)

  • 電気刺激による筋収縮は非生理的:小さな運動単位から動員される生理的収縮とは逆転している可能性あり。
  • エフェレンス写の欠如:中枢フィードバックが働かず、運動学習に結びつきにくい。
  • 皮膚トラブル:電流密度の調整や波形の工夫が必要。
  • 過用による筋疲労:休止時間(duty cycle)を適切に設ける。

6. 低周波刺激の適応(表から一部抜粋)

目的周波数パルス幅強度
痙縮抑制20〜100Hz0.2〜0.3ms収縮閾値以下または強縮が起こる程度
筋力強化20〜60Hz0.2〜0.3ms中〜高強度(耐えられる範囲)
鎮痛(TENS)10〜100Hz0.1〜0.5ms感覚閾値の2〜3倍

まとめ:

低周波刺激は、神経・筋への「入力」を加える強力なツールですが、それだけに使い方の質が問われます。

中枢神経障害例では特に、随意性の有無や運動学習との関係を意識した使い方が重要です。

リハビリテーションにおける 電気刺激療法の展望

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