Shoulder specific exercise therapy is effective in reducing chronic shoulder pain: A network meta-analysis
Anelise SilveiraID1☯*, Camila Lima1☯, Lauren Beaupre2,3☯, Judy Chepeha3☯, Allyson JonesID2☯
1 University of Alberta, School of Public Health, Edmonton, Alberta, Canada, 2 University of Alberta, Faculty of Rehabilitation Sciences, Edmonton, Alberta, Canada, 3 University of Alberta, Collaborative Orthopaedic Research, Edmonton, Alberta, Canada
☯ These authors contributed equally to this work.
肩に特化した運動療法は慢性肩痛の軽減に効果的:ネットワークメタ分析
link→https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11057978/pdf/pone.0294014.pdf
今朝、TVで肩についてご紹介されていたので、肩関節の痛みに対する運動療法の効果について、英語論文を紹介したいと思います。
以下、簡単に紹介です。
要約
慢性的な肩の痛みに対して、肩特有の運動療法(ET)は痛みを軽減する効果があるとされます。この研究では、運動療法に加え、補助療法(注射、徒手療法、電気療法など)を併用した場合の有効性を検証し、従来の治療法と比較しました。
方法: ランダム化比較試験を用い、痛みの軽減、可動域(ROM)の改善、健康関連の生活の質(HRQL)の向上を調査しました。
この研究では、54の研究が含まれ、合計で3,893人の被験者が参加しました。被験者の平均年齢は**51.26歳(標準偏差: 7.55)で、約半数(52.7%)が女性でした。主な診断は回旋筋腱板関連の肩の痛み(79%)で、残りは非特定の肩の痛み(21%)**と分類されました。
結果: 肩特有の運動療法は、痛みの軽減に有効であり、最大52週間の効果が確認されました。一方で、補助療法の追加効果は限定的でした。
結果(日本語要約)
この研究では、肩特有の運動療法(ET)の有効性が検証されました。その主な結果は以下の通りです。
1. 痛みの軽減
肩特有の運動療法(ET)は、最大52週間にわたり痛みを有意に軽減しました。
ET単独、または以下の補助療法を併用した場合の効果が確認されました:
電気療法(MD = -2.5; 95% CI = -4.2 to -0.7)
徒手療法(MD = -2.3; 95% CI = -3.7 to -0.8)
注射療法(MD = -2.4; 95% CI = -3.9 to -1.04)
補助療法の追加効果は限定的であり、特に注射療法は感度分析で統計的有意性を失いました。
2. 肩の可動域(ROM)
外旋(ER)や外転(ABD)の可動域には改善の傾向が見られましたが、統計的または臨床的に重要な改善は確認されませんでした。
3. 健康関連の生活の質(HRQL)
SPADIやDASHスコアで評価された健康関連の生活の質には改善傾向がありましたが、補助療法を併用しても、有意な改善は見られませんでした。
4. 感度分析
バイアスリスクが高い研究を除外しても、運動療法の効果は変わらず確認されました。
一方で、注射療法の効果は感度分析後に有意性を失いました。
5. 総合的な結論
肩特有の運動療法は、慢性的な肩の痛みを軽減する第一選択肢として推奨されます。
補助療法を加えることで追加的な利益はほとんど得られず、運動療法単独でも十分な効果が期待できます。
この結果は、肩特有の運動療法が痛み軽減において効果的であり、補助療法の追加は必須ではないことを示唆しています。
結論: 肩特有の運動療法は慢性的な肩の痛みに対する第一選択の治療法として推奨されます。補助療法の追加による利点は少なく、痛み軽減に関しては運動療法単独で十分な効果が得られる場合が多いとされます。
この研究の結果は、肩の痛み治療における運動療法の重要性を支持し、コストパフォーマンスの観点でも有用性が示唆されます。
論文を読んで感想。
色々な患者様を拝見して、肩関節の痛みは複雑で難しい。
痛みがあるからといって注射が第一でもないし、痛みがあるから電気療法をしようと短絡的な考えでも良くならない。
肩関節は運動性と運動しながら安定性が要求される非常に繊細でダイナミックな組織。
運動療法で、我々の手で、その動き、硬さ、痛みなどを繊細に感じれる「人の手」による運動療法が非常に効果があることが裏付けられた論文だと思う。