【要約】
足首にある上伸筋支帯・下伸筋支帯は、腱を安定させるプーリーとしての役割を担っているだけでなく、豊富な固有感覚受容器を持つ「感覚器官」としての側面も持っています。痛みや筋バランスの乱れがあるとき、腱や関節だけでなく「支帯」そのものに着目することは、臨床の感度を高める重要な視点になります。
【本文】
足関節の周囲にある「上伸筋支帯」と「下伸筋支帯」。これらは解剖学的には腱を押さえるバンドのような役割、つまりプーリー(滑車)のような構造として知られています。足首の屈伸運動に伴って、腱が浮き上がらずに所定の軌道を通れるように保ってくれています。
しかし、この支帯は解剖学的に「薄く、柔らかい」特徴を持っており、構造的に見れば腱の安定性を完全に担保するには少し頼りない存在です。
ここで注目したいのが「支帯=感覚器官」であるという視点です。
支帯は、固有感覚受容器が豊富に存在する組織です。そのため、腱や筋の動き、足関節のねじれといった微細な変化に対して非常に敏感に反応できるセンサーの役割を果たしています。また、支帯の下を通る腱は、単に通過しているだけでなく、一部が支帯に広範に「挿入」していることが多いという点も特徴です。
これにより、支帯は腱や関節の動きに連動しながら、足関節全体の運動を協調的に支えてくれているのです。臨床的には、足首の不安定感や筋のアンバランスを感じるケースで、関節や腱だけにアプローチしても改善しない場合、支帯そのものが感覚的なアンバランスを捉えて過敏になっている可能性があります。
痛みの訴えが「関節そのものではなさそう」「腱も異常がない」と感じた時には、支帯を軽く押さえてみる、感覚刺激を入れてみるなどの介入が大きなヒントになるかもしれません。
若手セラピストの皆さんにとって、「支帯」は見過ごされがちな組織かもしれません。しかし、腱や関節だけでなく、感覚の司令塔としての支帯に注目することで、より繊細な評価とアプローチができるようになるはずです。